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芸術家としての「アドラー心理学」的生き方

 前回のブログでは、アドラーの高弟ウォルター・べラン・ウルフが提唱する「3つの生き方」を紹介させてもらいました。☞「アドラー心理学」的な生き方とは

 今回は(その中の)芸術家のアプローチ方法であり、最も「アドラー心理学」的と思われる「造形芸術のような生き方」についてご紹介したいと思います。

「造形芸術のような生き方」をするためには、(これは芸術家の資質として必要なものであるが)4つの基本的な知恵をマスターする必要があるとウルフは言います。

『第一の知恵は素材についての知識である。画家に絵の具の知識が必要なように、人生の芸術家は人間性を理解しなければならない。』これはアドラー心理学的な考え方の知識、「human nature(人間知)」をまずは知る必要があるということかもしれません。

『第二の知恵は職人的な技能である。職人的な技能とは、素材を意味のあるデザインに変える技だ。たとえば作家は、自分の意図することを読者に伝えられるように、言葉の組み立て方を習得していなければならない。望みのデザインを作り上げるために、彫刻家は御影石や木の彫り方、あるいは粘度のこね方を知る必要がある。人生の芸術家の場合は、人間性の修正方法を知っておかねばならない。まず自己教育からはじめて、次に人間社会がより住みやすい場所になるように、友人仲間を動かす力が求められよう。』これは、どうすればライフスタイル(一般的には性格とよばれるもの)を変えられるか(修正していけるのか)という知識と、それを「どのように変えていくべきか」というコモンセンス(共通感覚)を知ることと言ってもいいかもしれません。社会は個人とは別のルールで動いており、その社会から与えられる課題(ライフタスク)を明確に理解しておくことが重要です。さらに、「共同体感覚」を使って仲間に貢献し、仲間と協力していく方法をマスターすることも必要となります。

『三番目の知恵も知識であるが、こんどは芸術の目的、目標に関する知識である。人間性を知り、自分の行動をどのように変えるか、自分の従業員、子どもあるいは管理人の人生にいかにして影響を与えていくかを知っていても、自分の人生に対する計画かデザインを持ち合わせていなければ人間として幸福にはなれないのだ。』これはライフスタイルを形成する際に最も大事な「仮想的目標とは何か?」という知識と、「自分自身の目標を知る」ということなのかもしれません。(自分自身の目標を知るための方法は、次回のブログで解説したいと思います)


『第四の知恵は、これら必須の知恵のなかでも最もとらえがたい知恵、勇気である。どんなすぐれた芸術家の行く手にも障害は横たわっている。傑作を書こうと夢見ても、いざ目の前にでんと積み重ねられた白紙を見ると臆病風に吹かれて尻込みしてしまった新聞記者はたくさんいる。また、彫刻家志望者が頭ではすごい人物像を彫ろうと思っていても、実際に何も寄せつけないような固い冷たい御影石を前にするとたじろいでしまうことが多い。同じように、実に多くの人々が、自分の可能性を知り、自分の技能を確信し、人生の目標も決まっているのに、前に進むのをためらいチャンスを失っている。』


 最後の四つ目の知恵は、アドラー心理学では最も重要なキーワードの一つである「勇気」です。アドラーは『Adler Speaks』という本の中で、「三つの勇気」について語っています。それは「不完全な勇気」「失敗する勇気」、そして「誤っていることを明らかにする勇気」です。


 以上、四つの知恵をマスターすることが、芸術家としての「アドラー心理学」的生き方ということになります。



ここで紹介させてもらったウルフの本はこちらをご参照ください:『どうすれば幸福になれるか(上)』(一光社)


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



 
 
 

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©  Shohei Suzuki

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