top of page

私たちは仮想の世界に生きている③ -仮想から「今ここ」へ 【瞑想の意義と効果】-

 人は誰もが劣等感を抱えており、それゆえに「目標追求しながら生きている」というのがアドラー心理学の前提でした。ここでいう目標とは、(無意識ながらも)自ら作り上げた仮想的目標であり、結果的に人は「ありのままの現実」ではなく、「仮想世界」に生きていることになるのだということ。


 しかし、「瞑想(状態)」を作り出すことで「今ここ」に意識を向けると目標追求が遮断され、(一時的にとはいえ)劣等感が消失するので、我々は「仮想世界」から抜け出すことができるのだということを、前回までのブログでお話ししました。


 今回のブログでは、「瞑想」によってどんな効果が得られるのかを、アドラー心理学的観点から紹介したいと思います。以下の内容は、野田俊作先生の『アドラー心理学を語る2 グループと瞑想』(創元社)からの引用に、私なりの説明を加えたものになります。




野田先生はこの著書の中で、瞑想の意義は5つあると言っています。

① 正しい状況認識

瞑想状態を、ボーッとしている状態(半分起きていて半分寝ているような半覚醒状態)だと考えている人は少なくないようですが、これは明らかな誤りです。瞑想とは、「今ここで起きていることに目覚めていることだ」と野田先生は言います。つまり、瞑想していなければ逆に寝ぼけている状態なのであり、普通に生活している状態こそが「ちゃんと目覚めていない状態」である(いわゆる「仮想世界」にいる状態なのだ)ということになります。瞑想とは、目覚めていることであり、今に気付いていることであり、今を見届けることです。瞑想することで人は仮想世界を抜け出し、「今ここ」に対する正しい状況認識ができるようになりるのです。


② 劣等感をなくし自己受容を可能にする

瞑想状態に入ると、「今ここ」に意識が向けられるので、過去と未来に対する「思考」がなくなります。よってその思考に付着してくる「感情」(過去に対する憂うつとか未来に対する不安とか)も消失するので、(人間ならば誰もが持っている)「劣等感」がなくなります。それは瞑想によって、目標追求がストップされるからでもあり、結果的に、「今ここにいる自分」をそのまま受容することができるようになるのです。



③ 共同体感覚を目覚めさせる

共同体感覚とはアドラー心理学の根幹をなす「思想」です。共同体感覚とは、「他者に対して関心を持つ」ことから始まり、「他者は仲間である」という感覚を育み、そして(究極的には)他者と自分との間には境界線はない(他者と個人は一体化したものであり、人間はそもそも宇宙という全体の一部であると、そこまで広く)考えます。瞑想は、この共同体感覚に目覚める効果があると、野田先生は言っています。

『瞑想すると、他人や世界全体に対する態度も根本的に変わってくる。これが瞑想の第三の意義。瞑想して目標追求がなくなると、自分中心ではなくなって、優しくなれる。目標を追求するから、ついエゴイストになってしまうわけです。目標がなくなれば、エゴイストであることはできなくなって、ついうっかりと共同体感覚に目覚めてしまう。前著133頁』


ついうっかり「共同対感覚」に目覚めてしまうというところがいいですよね(笑)。ただしアドラーの言っていた共同体感覚が「瞑想状態」のことなのかどうかは、今後検証の余地はあると思います。


④ ライフスタイル(性格)の変化

アドラー心理学でいう性格、ライフスタイルを維持しているのは、目標追求のエネルギーであると野田先生は言います。つまり目標追求がストップすれば、ライフスタイルが働かなくなり、ライフスタイルが働かなくなれば、行動における(無意識の)「自動操縦」がなくなります。それまではAという現象に対して必ずBと反応していたものを、CとかDとか、別の反応をすることも可能になる。つまり自由意志が働くようになるのです。結果的に、幼い頃に作られたライフスタイルがゆるんでくるわけですね。


⑤ ライフスタイルからの解放    

そう、ライフスタイルをゆるめることによって、我々は最終的にライフスタイルという拘束服から解放されるのです。


以上、今回は「瞑想の意義と効果」をまとめてみました。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)


閲覧数:255回0件のコメント

Comments


bottom of page