続・アドラー心理学で考える『人生の課題』とは
- 鈴木昇平

- 2020年4月5日
- 読了時間: 4分
前回のブログではアドラーが残した名言でもある「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」という言葉が生まれた背景についてお話ししました。☞アドラー心理学で考える『人生の課題』とは
アドラー心理学では、「個人」と(その個人を取り巻く外側の)「社会」との関係性でその人の「心理」を考えます。つまり個人が直面するsocial problems(社会から与えられる課題)に対して、どのような行動を取ったか(あるいはどのような態度を取り、どのように思考し、どのような感情が生まれたかなど)によって、その人の心理状態を理解しようとするのです。
この外側の社会から与えられる課題を、アドラー心理学では「ライフタスク(人生の課題)」と呼びます。ライフタスクは主に3つあり、それは「仕事の課題」・「交友の課題」・「愛の課題」に分類されます。
「仕事の課題」とはいわゆる職業としての仕事だけではなく、主婦にとっての家事や育児、学生にとっての勉強、子供にとっての遊びなど、ありとあらゆる生産活動全般のことを言います。アドラーは仕事の課題に関して、「われわれが住んでいる地球に本質的にそなわっているさまざまな制約のもとで、われわれが生存してゆくためにどのような生産活動をみつけるかということである」と言っています。
「交友の課題」とは「他者とどう付き合うか」という、対人関係一般の課題です。職場の上司や同僚や部下との関係、それから友人や隣近所、最近では様々なコミュニティに所属する人も多いと思いますが、そのような対人関係全般の課題を交友の課題と呼んでいます。アドラーは交友の課題に関して次のように言っています。「交友の課題とは、仲間の人々の間で協働的に生きていくために、人間社会のどこにどうやって自分の居場所をみつけるかということである」交友の課題は、他者との関係性を作る上で最も根源的な課題であるといえます。「居場所がない」という漠然とした不安を抱える人が最近は増えていると聞きますが、その「居場所感」につながるものも「交友の課題」の範疇であると考えられます。
最後に「愛の課題」ですが、「愛の課題」は「愛と結婚の課題」と言われることもあるように、「異性関係」と「家族関係」の2つから成ります。異性との交際、配偶者の選択、結婚生活から性生活、そして親子関係にいたるまで、全てが「愛の課題」です。アドラーは愛の課題について次のように述べています。「愛のタスクとは、われわれ人類が2つの性からなっているという事実、そして人類の今後の存続がわれわれの家庭生活によって決まってくるという事実にどう対処するかということである。」
以上、人生の3つの課題についてその特徴を説明しましたが、アドラー心理学で最も困難な課題と考えられているのが「愛の課題」です。なぜかというと、愛の課題では「性関係」という極端に近い対人関係が要求されるからです。よって愛の課題への建設的な対処には、大きな「勇気」と「共同体感覚」が必要であると考えれています。(勇気と共同体感感覚はアドラー心理学の最重要キーワードです。これらについてはまたの機会にじっくりお話ししたいと思います)
ちなみに3つの課題の中で最も易しいと言われているのが「仕事の課題」です。これは他の課題と比べて他者との距離が遠い分だけ解決もシンプルであり、共同体感覚も最小ですむと考えられているからです。そう、アドラー心理学で考える「ライフタスク(人生の課題)」とは、その全てが他者との関係性における課題であり、その距離が遠いほど易しく、その距離が近いほど難しいと考えます。これが一般的な課題と言われるものと異なるところですよね。なんと言っても「人生のありとあらゆる問題は対人関係の問題である」とアドラーは言い切ったくらいですから。
最後にもう一つ言っておくと、これら3つの課題は「偏りなく」「バランスよく」こなす必要があるとアドラーは言っています。そう、どれか一つでもおろそかにしてはいけない、それが「ライフタスク(人生の課題)」の難しさなのです。次回のブログではこのあたりのことをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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