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勇気のある状態は「心のあり方」でつくることができる

 心のあり方には2つあります。一つは『自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じていること(これを「fixed mindset=硬直マインドセット」』と呼びます。もう一つは、『人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができると信じていること(これを「growth mindset=しなやかなマインドセット」と呼びます。


 このように語るのは心理学者のキャロル・S ・ドゥエックです。☞マインドセットやればできるの研究


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 今日の話のポイントは、硬直したマインドセットの人(つまり「自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人)には、『自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない』という特性があることです。

 一方で、しなやかなマインドセットの人は、能力を証明する必要がありません。なぜなら「しなやかなマインドセット」の人は、その気になれば能力はどんどん伸ばすことができると信じているからです。


 そして、様々な研究結果からドゥエック博士が導き出した結論は、「人間の資質・能力は努力しだいで伸ばすことができる」というものだったのです。これは学力などの知的能力だけではなく、運動能力や芸術的な分野、そして人格や性格と呼ばれるような人間的な資質にまで、全てに言えることでした。(ビックリですよね)

 実は、この「しなやかなマインドセット」は「勇気のある状態」と非常に近しいものがあると私は考えています。アドラーの高弟であるルドルフ・ドライカースが、勇気について次のような言葉を残しています。


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 まず、勇気は「自己勇気づけ」の産物であるということ。そして、ポイントとなるのは二段落目の言葉で「自分自身の価値を証明することだけにエネルギーを浪費することがなければ、我々は有益な目標に没頭できる」というところです。


「自分自身の価値を証明することだけにエネルギーを浪費する」これは明らかに、能力は固定的なものであると考える「硬直マインドセット」の特性ですよね。

 つまり勇気とは、自分自身の価値を証明するために使うものではなく、直面している課題(もっと有益な目標)に没頭するためのエネルギーであるとドライカースは言っているのです。これは「硬直マインドセット」とは真逆の「心のあり方」です。


 有益な目標とは、まさにアドラーが提案する「社会的有用タイプ」であり、勇気という活力がその方向に伸びていることが分かります。


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 つまり何が言いたいのかというと、勇気というエネルギーは「自分への関心」とか「自分の価値や能力を他者に示す」とかいう目的からは生まれてこないということです。大切なのは「自分(=個という呪縛)」を解放することであり、関心はあくまでも直面する「課題」に(それを正しく解決することに)向けておくこと。その課題とは(アドラー心理学的に考えるならば)全てが「対人関係」をともなう課題なのです。☞人生の課題(ライフタスク)

 アドラーは「誰もが何事をも成し遂げることができる」と言いました。そして「これがmaxim(行動の原理・原則)である」と。しかし、それは「勇気というエネルギーを使って正しく努力すれば」という条件付きです。ドゥエック博士が現代の科学でそれを証明してくれました。

 自分の価値や能力を証明する必要はありません。なぜなら、我々は何事をも成し遂げることができるからです。我々の基本的資質や能力は、努力しだいでいくらでも伸ばすことができる。まずはそう信じることが大事です。勇気のある状態は、「心のあり方」でつくることができるのですから。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)


 
 
 

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