勇気とは「社会的成功」への道しるべである
- 鈴木昇平

- 2020年4月14日
- 読了時間: 3分
アドラーは「人生の課題は、答えを出すべき数学の問題のように考えるべきだ」と言いました。これは言い換えるならば「人生の課題には正しい解決方法がある」ということです。勇気は、困難を克服するための活力ですが、人生の課題を「正しい解決へと導く道しるべで」あると考えることもできます。
勇気は2つの軸で考えることができます。一つは「活動性」であり、もう一つが「共同体感覚」です。共同体感覚は「他者に関心をもつ」ことで発達していく潜在的な能力です。共同体感覚については次の二つのブログで詳しく紹介しているのでそちらをごらんください。

「活動性(activity)」という概念を、アドラーは「運動は時間と空間の両方で起こっている」という物理学からその着想を得たと言っています。これを心理学に適用すると、「空間」は人間が所属する社会に相当し、「時間」は行動が早いとか遅いといった観念として表すことができます。「アドラー心理学入門」(一光社)には以下のような例が挙げられています。
「家出をした子ども、街角でケンカを始めている子どもは、家の中でイスにすわっていたり本を読んでいる子どもよりも活動性は高いと考えられます。・・・つまり私たちには運動としての活動性があって、それをたくさん出すのかあるいは無気力な人のように最小限の量しか出さないのかということです。81頁」
つまり何が言いたいのかというと、「活動性の程度は高いほうがいいよ」とアドラーは言っているのです。しかし、活動性が高いだけでは家出をしたり外でケンカをしたりするだけなので、もう一つの要素が必要となります。それが「共同体感覚」です。
つまり「活動性」と「共同体感覚」が共に高められた状態(そのような行動をとることが)、人生の課題に対する「正しい解決方法」ということになるのです。しかし一つだけ注意しなくてはいけないことがあります。それは、「活動性」と「共同体感覚」を引き出すには順番があるということです。まず始めに「活動性」を高める必要があるとアドラーは言っています。なぜなら「共同体感覚」というものは、活動性(というその行動に)よって引き出されるものだからです。

まとめるとこういうことになります。人生の課題に対する正しい解決方法は、まずは「自ら動くこと」で活動性を高めることが必要です。(私はこれを「自助の精神・自立の精神」と考えています。)さらに、高められた活動性は自分のためだけではなく、「他者のため」にも使われる必要があるということです。(私はこれを「公助の精神・協力の精神」と考えています。)アドラーは、活動性が高められ、共同体感覚が十分に引き出された人間を、「社会的有用タイプ」と名づけました。この「社会的有用タイプ」が、人生の課題を正しく解決した人間の「あるべき姿」だと考えたのです。

そして、社会的有用タイプに向かうこの斜めの道筋が「勇気の」方向性です。つまり勇気とは、人間を正しい方向へと導いてくれる「社会的成功への道しるべ」なのです。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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