共同体感覚は受け身ではなく、能動的に働きかけるもの
- 鈴木昇平

- 2020年5月2日
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アドラーは人間関係を「距離」で考えていた節があるようです。アドラーは感情を主に二つに分けていて、「自己と他者を結びつける」統合的感情と、「自己と他者とを引き離す」離反的感情があると言っているからです。これはもちろん物理的距離でなく心理的距離の話です。
アドラー心理学では他者に関心をもち、他者が仲間であると考え、そして他者と協力していこうとする精神や態度を「共同体感覚」と呼んでいます。共同体感覚が十分に発達している人とそうでない人とでは、心理的距離の取り方が違います。
共同体感覚が十分に発達している人は、他者に関心を持ち、自ら動くことで他者との距離を縮めようとします。しかしそうでない人は、自分に関心があるので自ら動こうとはしません。どうするかというと、他者の関心を自分に向けさせ、他者をこちらに引き寄せることで注目を得ようとするのです。
とはいえ、注目を得るだけでは他者との距離は縮まりません。自己と他者との関係性のゴールは「統合」であり「一体」であって、それは一方が近づき、もう一方が心を開いた時に初めて成し遂げられるものだからです。共同体感覚が発達していない人は、他者が心理的距離を縮めてきたとしても、おそらく心を開こうとはしません。関心が自分にしか向いていないので、他者に心を開いて「一体」になることができないのです。
今は、他者を過剰に意識し「他者に嫌われたくない」と考える人が非常に増えているように感じます。しかし、これは共同体感覚の発達ではなくて「自分に対する関心の強さ」の現れです。「他者に◯◯されることに自分がどう思うか」ではなくて、「他者が◯◯することに自分がどう思うか」が、他者への関心です。つまり共同体感覚とは受け身のものではなく、能動的に働きかけるものなのです。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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