top of page

人間にとって必要なのは「重要感」と「所属感」である

 人は、誰もが「重要感」と「所属感」を求めて生きています。「重要感」とは英語で言うsignificanceのことであり、つまりsign(印を付ける)くらい重要であるという意味で、例えば「集団の中でひときわ目立っていて、周りから一目置かれている」ようなイメージです。所属感というのは英語でいうbelongingであり、これは例えるならば「他者と繋がっていて、その絆がしっかりしていて切れないような安心感や居場所感」と考えると分かりやすいかもしれません。

 人は、この「重要感」と「所属感」を求めて絶えず動き続けているとアドラー心理学では考えます。なぜなら「重要感」と「所属感」が、「劣等感」を心的に補償する(埋め合わせる)唯一の方法だからです。これを「運動の法則」とアドラー心理学では呼んでいます。

 平和な日常生活を送る中で、自分のことを特別扱いしてほしいと思ったことはないですか?例えば「昇進して肩書きをもらえれば、周りは自分を特別扱いしてくれるんじゃないか」とか、あるいは「もっと有名になったりもっとお金持ちになれば、周りの人たちは自分を重視してくれるんじゃないか」とか。そのような感覚が重要感につながるものです。多かれ少なかれ、誰もがこのような感覚を求めているとアドラー心理学では考えます。これを「縦の動き」としましょう。

 しかし、災害などが起きた時、例えば、地震や津波や(大型の)台風などに直面した時、人は重要感を求めるでしょうか?おそらく求めないと思うのです。そのような時は、まずは人と繋がって自分の居場所を確保し、生きるための安心・安全を得ることを第一に考えると思うんです。これが所属感につながるものです。これを「横の動き」と考えます。

ree

 つまり人は、その時々の状況によって、重要感を求めることで(縦方向に)動いたり、所属感を求めることで(横方向)に動いたりする。常に心理的な補償の方向に動き続けるのだとアドラー心理学では考えます。だからまっすぐな直線ではなくて(下図のように)ぐにゃぐにゃとした非線形的な動きをすると考えられます。そして、この運動の向かう先には、その人にとっての「完璧さ」「完全性」といった目標があるのです。しかし人は、そのゴールに限りなく近づくことができたとしても、たどり着くことはできません。なぜならそのゴールは、その人自身が作り上げた「仮想の目標」だからです。つまり人は、永遠に到達できない仮想の目標に向かって、劣等感を埋め合わせるために絶えず「運動」し続けている存在である。これが「運動の法則」という考え方なのです。


ree

 さらに、この運動というのは常に「困難の克服」という形で現れるとアドラー心理学では考えます。この困難は「社会的な文脈の中でもたらされる困難」、つまり「対人関係」で直面する課題(ライフタスク)をどのように克服していくか?という運動なのです。この困難をどのように克服していくか、その「克服の仕方や戦略」がライフスタイルであると考えられます。


ree

結論。人は劣等感を埋め合わせるために、仮想の目標を(自ら)作り上げ、そこに向かって「重要感」と「所属感」求めるように生きている。それはその人の命が尽きるまで終わることのない、心理的な「運動」なのです。

鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)

 
 
 

コメント


©  Shohei Suzuki

bottom of page