サピエンス全史とアドラー心理学
- 鈴木昇平

- 2020年3月28日
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以前のブログで、アドラーは「虚構」という概念を心理学的に(特に目的論における「最終目標)という概念と結びつけて)考えていたのだということを書きましたが、いわゆる「虚構の有用性」を説いたという意味では、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』もアドラー心理学に通じるものがあると私は思っています。
ヒト科のホモ属のサピエンスという生き物である「ホモ・サピエンス(我々人類)」が食物連鎖の頂点に立ち、ここまでの繁栄を極めることができたのは「虚構」を創り出すことができたからだとハラリは言います。つまり虚構を共有することで、お互いに協力することを可能にしたからだというのです。
アフリカでほそぼそと暮らしていた猿の一種族に過ぎなかった我々人間は、約7万年前に認知革命を起こすことに成功します。それは虚構としての「言語」を作り出すことでした。サピエンスは虚構である言語を駆使することでお互いの意思を伝え合い、協力し合うことでサバイバルすることができるようになったというのです。
やがてサピエンスは究極の虚構である「貨幣」を生み出すことで、最も効率的に多くの見知らぬ者どうしが協力し合えるシステムを作り上げます。(物々交換が中心だった当時の経済システムで、綺麗な「貝」に置き換えてそれを交換できるようにしたという話が「貨幣の始まり」としては有名ですよね。真相がどうだかは分かりませんが買う(かう)とか財(ざい)とかいう字には、「貝」が含まれているというのは何となく説得力があります)
いずれにしろサピエンスは「貨幣」という虚構を「みんなで信じて、それを共有する」ことに成功したのです。虚構というのは「事実ではないことを事実らしく作り上げること」であり、それはいわば「つくりもの」です。この「つくりもの」を「まるで価値があるかのように」「みんなで」信じることができた人類。これは他の生物とは一線を画す進化であったと言えます。
そしてサピエンスは「国家」や「国民」、「企業」や「法律」、さらには「人権」や「平等」といった概念まで、ありとあらゆる虚構を作り上げ、それを信頼し共有することで発展してきたというのがハラリの見解でした。
しかし『サピエンス全史』からさかのぼること100年前、実はもう一人、虚構の有用性を説いていた学者がいたのです。その名はハンス・ファイヒンガー。アドラーはこの哲学者の著書から大きな影響を受けていました。続きは先日のブログ:アドラー心理学における虚構性をご覧ください。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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