「セラピー」と「カウンセリング」の違い 〜アドラー派の場合〜
- 鈴木昇平

- 2020年7月9日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年4月8日
「セラピー」と「カウンセリング」はどう違うのか?
ということがよく議論に上がっているようです。私自身、何度も質問を受けたことがあり、やはりここのところはきちんとブログに書いておかなくてはなと思いました。
まずは「セラピー」と「カウンセリング」という言葉の違いから説明しましょう。
「セラピー」(therapy)は、その本来の意味が「療法」(治療方法)であるのに対し、「カウンセリング」(counseling)は「相談する」というのがその語源です。
よって「セラピー」という言葉は、アロマセラピー・カラーセラピー・アニマルセラピーなど様々な業界で使われているし、マッサージなどの施術を行う人をセラピストと呼ぶこともあります。
つまり何が言いたいのかというと、「セラピー」は心理に限らず広い意味で使われている言葉であるということです。セラピーの意味は「治療方法」ですから、その「手段」がいくつもあるのは当然です(特にセラピーと呼ばれるものは、「手術や薬を用いない療法」という意味があるようです)。
つまりセラピーを心理的に用いる場合は、「心理セラピー」(サイコセラピー)と呼ぶのがより正確であるといえます。
いっぽうで「カウンセリング」の本来の意味は「相談」ですから、こちらは必然的に心理的な分野に関わる業務ということになります。ただ、近頃では美容・健康業界などでもカウンセリングという言葉を使ったりするので(例えばどんな髪型にするかとか、どんな体型を目指すかといったことを相談して決めることをカウンセリングと呼んだりするので)、我々「心理屋」(心理学を生業とする業界の者)は「心理カウンセラー」と名乗るほうが、誤解がないのかもしれません。
それでは「心理セラピー(サイコセラピー)」と「心理カウンセリング」の違いは何なのか?
ちなみにアメリカではこの使い分けが明確になっているようで、心理カウンセリングは「精神疾患」とは呼べない程度のもの(軽症のもの)を扱い、それより重度のケースはセラピー(心理療法)が扱います。つまり「相談を受ける」程度ですむカウンセリングと、「治療を施す」必要があるセラピーとの使い分け・役割分担ができているということです。しかし日本では、このあたりがごちゃ混ぜになっているような気がします。(まあ、軽度か重度かの見極めも難しいのですが)
しかしアドラー派では、「心理セラピー」と「心理カウンセリング」の違いはかなり明確に区別されています。結論から言ってしまうと、アドラー派のカウンセリングでは「ライフタスク」を扱い、セラピーでは「ライフスタイル」を扱います。

ライフタスクとは「人生の課題」と呼ばれる3つの課題、「仕事の課題」・「交友の課題」・「愛の課題」のことです。つまりアドラー派のカウンセリングでは、これら3つの課題をどれか一つにしぼって、その出来事やエピソードを扱いながら、クライエントとカウンセラーが一緒にその問題の解決を目指します。カウンセリングの目標は、クライエントの「行動変容」です。
いっぽうライフスタイルとは、行動を作り出している大元の「信念」のようなものです。アドラー派のセラピーでは、この「信念」そのものを扱うことで、行動という枝葉の部分だけではなく、その根っこからの変容を目指すので、当然のことながらカウンセリングよりも難度が高くなります。
しかし、「行動」が変わって課題解決の方向に向かえば「信念」が変わることも少なくなく、カウンセリングには間違いなくセラピー的な副次効果があると言えるでしょう。
つまり、アドラー派ではまずクライエントのライフタスクにおける問題解決を目指すことでカウンセリング的に対応し、うまくいけば(クライエントの行動変容を確認できれば)それでよしとします。
それでもうまくいかない場合にのみ、ライフスタイル(信念)を扱うことでセラピー的に対応し、その後再びライフタスクに直面してもらうことで行動変容を確認する。
そのような流れで、アドラー派の「カウンセリング」と「セラピー」は使い分けられていると考えると、分かりやすいのではないでしょうか。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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