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アドラー心理学の『自己決定性』

 英語では「性格」や「人格」という言葉にcharacterとかpersonalityという単語を当てることが多いですが、これらの単語にはどうやら語源があるようです。


 characterはその語源がギリシャ語の「刻み付ける」、本来変わらないものという意味があるそうで、つまり『遺伝的な要因』が強いのではないかと言われています。


 いっぽうでpersonalityはcharacterよりは状況によって変わりうるという意味で、『環境的な要因』が強いと言われています(personalityの語源は諸説あるようですが、有力なのはラテン語のpersona、つまり仮面を付け替えるように変わりうるという意味合いが込められていると考えられます)


 アドラー心理学では性格や人格のことをライフスタイル(the style of life)と呼びますが、アドラー自身は「遺伝」も否定しなければ「環境」も否定しませんでした。つまり人間の性格にはcharacter的要素である遺伝も、personality的要素である環境も、両方の影響があるよねと言っているのです。


 しかし「それでは終わらないのだ」というのがアドラーの言い分です。人間は「遺伝」の影響も「環境」の影響も間違いなく受けるが、その上で選び取っているものがあるというのです。選びとるものを大まかに二つに分けるならば、それはuseful(建設的であるか)useless(非建設的であるか)ということです。そして、選び取る際に使われるのがその人間の想像力(creativity)であるとアドラーは言います。


 アドラー心理学ではこの想像力(creativity)を自己決定性と呼ぶことがあります。つまり人間は遺伝や環境の影響を受けながらも、(その上で)自らの人生を主体的に選び取っているんだという考え方です。ある犯罪者が「自分は家が貧しかったから、仕方なく犯罪に手を染めたのだ」と言ったとします。しかし、家が貧しくても真っ当な生活を送っている人もいるし、逆にその貧しさをバネにして(金銭的に)大成功している人だっているわけですよね。だから、ここにはまぎれもない本人の「自己決定」が入っているとアドラー心理学では考えるのです。


 原因論的な考え方とは真逆の、目的論の「楽観主義」的志向が出ているのがこの「自己決定性」の部分であると言えるかもしれせん。この考え方はsoft determinism(やわらかな決定論)と呼ばれることもありますが、「自分の人生は結局自分が決めているのだ」というアドラー心理学の最もポジティブな部分で、私はこの考え方が大好きです。


 ちなみに、アドラーはこんな言葉を残しています。「大事なのは何を遺伝したかではなくて、幼い頃に遺伝したものをどう使うかなのである」大変勇気づけられる言葉です。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)

 
 
 

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