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アドラー心理学の『目的論』

更新日:2020年3月24日

 今日はアドラー心理学の「目的論」についてお話ししてみたいと思います。世の中の多くのことが「原因論」で説明されることが多い中で、アドラー心理学は「目的論」を採用しているがゆえに「斬新だ」「劇薬だ」などと言われたりします。


 今日本では「アドラー」と名の付く本が800点以上出ているそうですが、おそらくそのほとんどが、アドラー心理学という名を使いながら、持論のスキルやノウハウを語るビジネス本・自己啓発本の類なのではなかろうか?と私は推測しています。


 これは何事もそうだと思うのですが、「原液」というものは決して飲みやすいものではありません。だから薄めて薄めて、時には味付けを変えてしまったりして商品化することが多い。アドラー心理学にも同じことが言えて、アドラーの言っていることは分かりづらいから、美味しいところだけをつまみ食いして、後は持論で固めてしまっている本を私はかなり多く目にしてきました。しかし、このアドラー教育研究所のアドラーブログでは原液をできる限り薄めずに、かつ飲める程度の味にして(分かりやすく)お伝えすることを目標にして書いています。


 前置きが長くなりましたがアドラー心理学の「目的論」について、アドラー自身がどのように言っているのかをご紹介しましょう。以下、『The science of living』(日本語訳「個人心理学講義」)の中から部分的に引用し、解説を加えます。


『そもそも個人心理学という科学は、生の神秘的な想像力を理解しようとする努力から発達した』とアドラーは言っています。人間の生(living)は神秘的な想像力に満ち溢れていて、それを解明しようとするところから個人心理学(アドラー心理学)はスタートしてるんだよと、アドラーは言っているわけです。


 さらにアドラーは、このように続けます。『その力は目標を追求し、それを達成しようとする欲求である』と。それは『仮に一つの方向で失敗したとしても、別の方向で補償しようとする力なのだ。そしてこの力こそが、 目的論的な力なのだ』とアドラーは言うのです。


 アドラーの言う目標とは、劣等感を補償する(埋め合わせる)ための目標です。興味深いのは、アドラーが『一つの方向で失敗したとしても、別の方向で補償する』力、その力こそが『目的論的な力』なんだと言っていることです。この目的論的な力というのが、先に述べた『生の神秘的な想像力(creativity)』です。人はこの想像力を使って、一度失敗しても別の方向で埋め合わせることができるんだよとアドラーは言っているわけです。


 つまり何が言いたいのかというと、アドラー心理学の目的論は、この「想像力」とセットで考えるべきなんだということです。原液(原著)は、薄められたジュースとは少し違うということをご理解いただけたでしょうか。次回はなぜアドラーがこのような考えに至ったか、目的論が出てきた背景についてお話ししたいと思います。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



 
 
 

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