top of page

アドラー心理学による「感情」の扱い方

 先日、アドラー派の心理カウンセラーを目指している方から「感情の扱い方が分からない」とのご質問を受けたので、今日はアドラー心理学による「感情」の扱い方についてお話ししたいと思います。

 

 「感情そのものを扱う」心理学って意外に多いのでしょうか?そのあたりのことは私も詳しくはないのですが、結論から言ってしまうと、アドラー心理学では「感情」を重視しないし、「感情」そのものを扱うこともしません。


 なぜかというと、「感情」は「ライフスタイル」が作り出しているものであると考えるからです。ライフスタイルは一般的には「性格」とか「人格」と呼ばれるものですが、アドラー心理学的にいうと、「自分自身と、人生の諸問題についての信念」であり、自分では理解もしていないし説明もうまくできないが「自分がいつもしっかり守っている運動の法則」ということになります。 *アドラー心理学教科書29Pから一部引用


 ライフスタイルはまだ幼い頃(4・5歳から遅くとも10歳くらいまで)に作られるものですが、分かりやすく言ってしまうと「子どもが社会で生き抜くための戦略」であり「信念」です。この戦略や信念を子どもの立場で言語化するならば「私はこのように生きていけば、弱い自分から逃れられる。だから私はこのように生きていくべきだ」という感じです。この「◯◯のように生きていくべきだ」という思いが、その子どもの「目的」になり、それがいつの日が無意識下に定着して、その人特有の「生き方の癖」になる。これが「性格」や「人格」と呼ばれるものであるとアドラー心理学では考えるのです。


 話を元に戻すと、この「目的」のために「感情は使われる」とアドラー心理学では考えます。だからアドラー派のカウンセリングでは「感情」を直接扱うことはしません。「感情」はライフスタイルの排泄物のようなものなので、感情そのものよりも、それを作り・使っているライフスタイルを直接扱うほうが効率がいいからです。(これはカウンセリングの時間短縮にもなるので、クライエントの経済的負担を減らすことにもつながります)


 しかし、アドラー派のカウンセラーが「感情」を全く無視するかというと、もちろんそんなことはなく、「感情」をカウンセリングの確認作業として使っています。その人がどんな場面でどの人と関わり(エピソード)その時「どのような気持ちになったか?」そしてその人はどのように対応し、その結果相手からどんな反応が返ってきて、「その時どのような気持ちになったか?」これはエピソード分析と呼ばれていますが、これを一つか二つ聴いていくと、その人のライフスタイル(生き方の癖のようなもの)がぼんやり見えてきます。


 つまりアドラー派のカウンセラーは、聞き出したエピソードから推測したライフスタイル(が作り出す目的)を確認するために、まるでリトマス試験紙のように「感情」を使っていると言えます。もちろんこの作業を行うには、高い技術の習得と修練が必要となるのは言うまでもありませんが。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)




 

 
 
 

コメント


©  Shohei Suzuki

bottom of page