アドラー心理学における「虚構性」
- 鈴木昇平

- 2020年3月26日
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アドラー心理学では目的論を採用しており、そこで扱われる目標とは想像力によって作り出された「虚構の目標」なのだということは、前回のブログでお話しした通りです。アドラー心理学で扱う目標とは
今日はアドラー心理学における「虚構性」について書いてみたいと思います。アドラーは1911年にフロイトやその仲間たちと別れていますが、ちょうどその年にドイツの哲学者であるハンス・ファイヒンガーが『かのようにの哲学』という本を出版しています。アドラーは「そのドイツ語の初版本を読んだ」と伝記にはあり、この本からかなりの影響を受けたと言っています。
ファイヒンガーの「かのようにの哲学」がどのような内容かというと、(かいつまんで言ってしまうと)、「我々は、世の中のあらゆる対象物を、as if(まるで〜であるかのように)理解しているだけだ」ということをひたすら指摘した本です。
例えば、「すべての原子が完全に規則正しく動いているかのように」我々は自然の法則という空想を創造したり、あるいは「善であって親切で思いやりがあるかのように」神様を信じることができるが、実際にはそれをきちんと確認しているわけではないよね?ということです。
つまり、我々はフィクション(虚構)を日常生活に取り入れたほうが都合がいい(実用的価値がある)からそれを使っているのであり、世の中のあらゆる対象物が「かのように」の偽りに服従させらてるんだよとファイヒンガーは言ったわけです。
アドラーは、この「かのようにの哲学」から「利用できる虚構」という考え方を応用し、自身の理論に「心理学的虚構」という概念として取り入れたと言われています。つまり、我々はありのままの世界を見ているわけではなくて、as if(まるでそうであるかのように)理解し、世界を認識しているに過ぎないというのです。
これがアドラー心理学の「仮想論」と呼ばれている考え方です。さらに、アドラーはこの「虚構」という概念を人生の「最終目標」とも結びつけました。よってアドラー心理学で扱われる目標は、fictional final goal(虚構の最終目標)と呼ばれたりします。そしてこの虚構の最終目標が、その人の人生における行動・態度・思考・感情などの全てを決定していると考えたのです。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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