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アドラー心理学で考える『人生の課題』とは

 アドラーが残した有名な言葉に、「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」というものがあります。果たしてそこまで言い切れるものだろうか?と思われる方もいるかもしれませんが、この言葉がどのような背景から生まれたのかを今日はお話ししたいと思います。


 アドラー心理学では、一般的に「性格」とか「人格」と呼ばれるものをライフスタイルと呼んでいますが、個人のライフスタイルは「様々な課題」に直面した時に必ず何らかの答えを出すと考えています。それをもし公式で表すとすれば以下のようになります。


ライフスタイル × ライフタスク =行動 


 ライフタスクは「人生の課題」という意味です。そして答えは必ず「行動」という形で出てくるとアドラー心理学では考えます。(この考え方を「精神力動」と呼んでいます。)例えば、「女性は私のことを軽蔑している」というライフスタイルを持った人が、「女性」というライフタスクに直面すると、「逃げ出す」という行動を取るという感じです。つまり「行動」とは、ライフスタイルが直面する課題(ライフタスク)に対して導き出す答えなのです。


 ライフスタイルとは簡単に言ってしまうと、その人の感じている「劣等感」を埋め合わるために作られた目標と、そこに向かう「動き」がパターン化したものです。例えば「私は弱い」(という劣等感)を持った人が、「誰かに守ってもらわなければならない」という(仮想の)目標を作り上げ、それを満たすための行動がパターン化するといった感じです。ライフスタイルに関してもっと詳しく知りたい方は以下のブログをご参照ください。



 アドラーは、人生には避けることのできない「課題」があると考えていました。それは主に3つあり、「仕事」・「交友」・「愛」の課題です。アドラー心理学ではこれら3つの課題を「ライフタスク(人生の課題)」と呼んでいます。(現代アドラー心理学ではこの3つ以外にも、いくつか他の課題を付け加えることがありますが、基本的にはこの3つであると考えてください)


 ライフタスクは、食欲や群居欲や性欲といった、いわゆる「3つの本能」とは違います。本能的な欲求は人間の内側から出てくるものですが、アドラーはそのような考え方はしません。アドラーは個人を「それ以上分割できない統一された存在である」と考え、個人の心理を、(丸ごとの個人)とそれを取り巻く「外側の社会」との関係性で探ろうとしたからです。(参照:アドラー心理学は「社会心理学」でもある)そう、ライフタスクと呼ばれる3つの課題はあくまでも外側から与えられるものであり、それは避けては通れない「社会的」な課題なのです。


 そして、この「仕事」・「交友」・「愛」という3つの課題は、全て「対人関係の課題である」とアドラーは考えました。人間の悩みは、この対人関係をともなう3つの課題に直面した時に生じるものである考えたことから、アドラーの先の言葉「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」という名言が生まれたのです。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)


 




 
 
 

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