アドラーの『目的論』が生まれた背景
- 鈴木昇平

- 2020年3月24日
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今日はアドラーの目的論が生まれた背景についてお話ししたいと思います。前回のブログアドラー心理学の『目的論』を一緒に読んでもらうことで理解が深まると思います。
個人心理学(アドラー心理学)の創設者でもあるアルフレッド・アドラーは、オーストリアのウィーン大学医学部を卒業して医師免許も取得していますが、実は大学では専門的な「精神医学」の訓練は受けていませんでした。そう、アドラーはもともと普通のお医者さんだったのです。
アドラーは、最初はポリクリニック(労働者階級の家族が無料で治療を受けられる病院)で「眼科医」として働き始め、その後開業して「内科医」として活躍しています。当時、アドラーの医師としての腕は確かなものだったようです。自伝でもある『アドラーの生涯』(金子書房)には、『アドラーはすぐに尊敬される医師になった。特に患者と同僚から、症状を診断する直感的でしばしば超人的な能力があるということで称賛された』とありますし、また別の本には『アドラーはスクランブルエッグを作るように患者を治療した』と書いてあるように、医者としてのセンスのようなものが元々備わっていたのかもしれません。
何はともあれ、アドラーのスタートは精神科医ではなくてお医者さんだったというのが、今日の話のポイントです。アドラーが、医者としての実践から得た知見が4つありました。一つ目は全ての器官は一定の目標に向かって発達していること①、2つ目は全ての器官は成熟した時に一定の形をもっているということ②。全ての器官は一定の目標(definite goals)と、到達した時の一定の形(definite forms)をもっているとアドラーは言います。
そして3つ目が、もし器官に劣等な箇所が出た場合、器官はそれを克服するために特別な努力をしているということ③。あるいは、その劣等器官を引き継ぐ形で、別の器官が補償的に働いているということ④。この4つのことが医療実践から分かったと言ってるのです。
そしてアドラーは、精神の働きもこれと同様であると考えた。つまり精神は、definit forms確かな形をもった、difinit goals確かな目標に向かって発達していくのだとアドラーは言います。そして、もし一つの方向で失敗したとしても、別の目標を立てて、その方向で補償しようとする力を持っていると考えたのです。これが、アドラーのいう「目的論的」な考え方につながります。
つまりアドラーの目的論は、かつての医者としての実践から得た知見(それは極めて生物学的観点から)着想を得ていると言ってもいいかもしれませんね。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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