アドラーの『夢理論』
- 鈴木昇平

- 2020年4月1日
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今日はアドラーの「夢の理論」について少しお話ししたいと思います。前回のブログでアドラー心理学の「全体論」について書きましたが、「夢」という無意識(あるいは半意識)状態も、その人のライフスタイル(性格)が作り出す全体的な動きの一環として確認されるものです。アドラーは夢についても非常に興味深い分析をしているので、以下に引用します。
『私たちはこれまでのところで、次のことを明らかにしてきました。
1. 夢は、夢見る人を、その人の人生のある状況において、自分の論理に反して、その人のライフスタイルが本来導く方へと連れていく気分を創り出すという役割を持っている。
2. 夢見る人は、夢の中から自分の課題を軽減するために望ましいと見える比喩や回想を引っ張り出すことによって、自分のライフスタイルへも帰すことができるある種の手段を用いる。
3. 夢見る人は、自分の目標〔達成〕のために必要な気分を一層激しいものとするために、好んで比喩を使う。』
以上、『教育困難な子どもたち』(アルテ)100頁より
まず夢には、気分や感情や情動を作り出すという目的があります。アドラーは「自分の論理に反して」という言葉を使っていますが、これはコモンセンス(共通感覚)に近いような一般的な理論や理性に反してという意味です。つまり人は、一般的な理論よりも極めて個人的な目標に自分を向かわせようとする時に、夢を使ってその気分や情動を喚起しているのです。
例えば、何かミスをしてしまって理屈では「謝らなくてはいけない。翌日謝ろう」と思っていたとします。しかしその晩に奇想天外な夢を見て、なぜかは分からないが翌日「謝らないほうがいい」との判断をし、結局謝らなかったとしたら、その人はまんまと夢の罠にハマったといっていいかもしれません。夢によって論理ではない気分や情動を喚起されたのです。そしてそれは、その人の成熟していないライフスタイルが求めた結果なのです。
このことは引用2の、「自分の課題を軽減するために望ましいと見える比喩や回想を引っ張り出す」ということにもつながります。本人には夢の意味は全く分かっていませんが、結果的に「謝る」という課題を回避する方向にその人を動かしているからです。
結論として3.「夢見る人」は、自分の目標(それは自らの劣等感によって作られた仮想の目標です)を達成するために必要な「情動」や「気分」を高めるために、夢という無意識(あるいは半意識)を使っていると言えるかもしれません。そしてこれは、アドラー心理学の「全体論」的な考え方として解釈することができます。
夢のもう一つの目的として、今直面している課題の「リハーサル効果」というのがあります。引用3につながる考え方でもありますが、例えばもうすぐ試験なのに全然勉強してなかったとします。もしその時あなたが「崖から落ちる夢」でも見たとしたら、それはライフスタイルからのシグナルであると考えられます。つまり、「もっと勉強しておかないとやばいぞ」とライフスタイルがあなたに教えてくれているのです。これは夢の効用と言えるかもしれませんね。このあたりのことはアドラー心理学による夢分析をご参照ください。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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