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アドラーが好んだ絵画や文学について

更新日:2021年4月8日

 今回は、アルフレッド・アドラーが好んだ絵画・文学などを紹介したいと思います。以下に、『アドラーの思い出』(創元社)より、エルベ-ル・シャフェ博士(精神科医・作家)のアドラーの思い出を引用します。





 【アドラーがルーブル美術館を訪れるのに何度かお供したことがあります。美術館の作品中、日常生活を題材にした作品をアドラーは愛しました。特にル・ナン兄弟の作品、『農家の食事』(ルイ・ル・ナン)、『農家の家族』を高く評価していました。アドラーは、これらの素朴で質素な題材の選び方に感銘を受けていました。芸術家や画家の大部分が壮麗な世界の描写と人生の壮大な記録に夢中になっているこの時代に、こういう題材が選ばれたことにとても感心していました。後にオランダ美術館を訪れたときには、アドラーは、フランドル派の家の中の場面や日常生活を描いた絵が気に入ったと言っていました。この中でのアドラーのお気に入りは、一七世紀のオランダ人画家ヤン・ステーンとファン・オスターデでした。55頁】



ルイ・ル・ナン作『農家の家族』

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 壮麗で壮大な世界を描く画家が多い中で、「ル・ナン兄弟の素朴で質素な題材の選び方に感銘を受けた」というところが、実にアドラーらしいなと思いました。アドラーが最初に開業したのはプラーター地区と呼ばれるところで、来院する患者は決して裕福ではありませんでした。時には無償で診療することもあったようで、アドラーの庶民の生活に寄り添う姿勢がうかがえるような気がします。

 【アドラーは、ゲーテ、シェークスピア、マルクス、ニーチェ、ドストエフスキーらの哲学者や作家たちを、人類の指針と考え重んじていました。それゆえ、アドラーの伝記作家たちがそこに着目するのは無理からぬことです。ですがアドラーは、それ以外にも、目的と事件を読み解いていく文章スタイルの二人の作家を特に高く評価していました。犯罪捜査に目的論的な推理を取り入れた、シャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイル。同様に演繹的推論スタイルのエドガー・アラン・ポー。この両作家がアドラーの心をとらえ、賞賛を得ていました。55頁】


コナン・ドイル

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 アドラーの著作を読んでいると、シェークスピアやゲーテ、ドストエフスキーなどの作品からの引用が数多く見受けられます。アドラーは彼らのことを優れた心理学者であるとも言っています。


 興味深いのは、アドラーが推理小説作家のコナン・ドイルやエドガー・アラン・ポーを愛読していたことです。アドラー派のカウンセリングは、いわゆる「推測」を多用します。クライエントの目的を(それは本人も自覚していない「隠された目的」です)を、推測しながらカウンセリングを進めていきます。これはアドラー心理学が「目的論」を採用しているからですが、他派には見られない特徴です。それは何よりもアドラー自身が、まるで事件の謎を解く探偵のように、カウンセリングを行っていたからかもしれません。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



 
 
 

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