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「関心をどこに向けるか」で決まる逆転の発想とは

 物事には二つの側面があります。それは「有用な面」と「有用でない面」です。この言い方に誤解があるならば、「有益な面」と「無益な面」としてもいいし、あるいは「建設的な面」と「非建設的な面」と言い換えてもかまいません。

 アドラーの言葉をそのまま引用すると、“on the useful side of life”と“on the useless side of life”ということになります。つまり「ユースフル」なのか「ユースレス」なのか、この2つの視点で物事を捉えてみるのはとても大事なことです。

 アドラーの高弟の一人に、ハインツ・アンスバッハーというフランス生まれのドイツ人がいました。この人はアドラーの心理学理論を体系的に整理した人として有名で以下の著書"The Individual Psychology of ALFRED ADLER”はアドラー心理学を学ぶ者(アドレリアン)にとってのバイブルと言われているほどです。


 このアンスバッハー先生がまだ若かりし頃のことです。

『私はアドラーに相談するため彼を訪問しました。わたしが捉えていた問題のひとつは、どんな職業を選んだらいいかということでした。わたしは、自分がしている仕事が全然楽しくなかったのです。そして、アドラーはわたしの問題、すなわち職業選択のことで困っているということがわかると、こう言いました。「職業指導相談員になってはどうですか?」今にして思うと、このことが、アドラーという人物についてどれだけたくさんのことを教えてくれているかわかります。なぜなら、これこそが、その根本において完全に心理療法の発想であるからです。つまり、人の関心を無益な面から有益な面に向けるということです。』

『アドラーの思い出(創元社)184頁〜185頁』




 そう、アンスバッハーの関心は職業選択にありました。しかし職業選択で悩んだり迷ったりすることは有用ではない「無益な面」です。職業選択に関心があるのだったら、いっそのことその関心を(自分ではなく)他者に向けてしまって、「職業指導の相談員になってしまえ」というのがアドラーのアドバイスだったのです。そのほうがずっと「有益」であろうと。

 これはまさしく逆転の発想です。アドラー心理学では、「関心の強さ」というのはそれ自体がリソース(資源)であると考えます。肝心なことは「その関心をどこに向けるか」、あるいは「どう使うか」なのです。それはたいてい「他者」のために使ったほうがユースフルなものになります。


 関心をどこに向けるかで、発想は逆転する。ポイントは、「自分の関心」に「共同体感覚」を織り交ぜることなのです。


鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)

 
 
 

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