「自分」に向けている関心を「他者」に向けると健康になれる
- 鈴木昇平

- 2020年4月11日
- 読了時間: 3分
更新日:2020年4月12日
誰もが自分に関心があります。会社での昇進から、思いを寄せる彼(彼女)との関係性、それから病気のことや将来に対するお金の不安などなど。多くの人が「自分のこと」で頭が一杯です。
自分への関心、これを英語でself interestと言います。「うつ」や「不定愁訴」などの神経症のほとんどは、この「self interstが強すぎる」ことが原因であるといっても言い過ぎではありません。それではself interestを弱めるためにどうすればいいかというと、「他者」に関心を向ければいいのです。これをsocial interest、アドラー心理学では「共同体感覚」と呼んでいます。
共同体感覚はアドラー心理学の「思想」とも言えるものであり、アドラー自身がその生涯で最も重視したものなので、厳密に言うともっと深い意味があります。しかしアドラーがアメリカへと渡り、ドイツ語で共同体感覚を意味する“Gemeinschaftsgefuel”を英訳しようとした時になかなかいい訳が見つからずに試行錯誤したのだそうです。そして最終的に落ちついたのが、このsocial interestだったと言います。つまり「他者への関心」なんです。
「他者への関心」というと誤解されがちなのは、「他者に嫌われたくない」とか「他者に嫌われないようにしよう」と思ったり考えたりすることです。これは「他者への関心」ではありません。「他者に嫌われたくない」というのは、他者に(自分が)嫌われたくないのであり、これは明らかに「自分への関心」です。
「他者への関心」とは、ストレートに言ってしまうと「自分から解放される」ことです。他者のやっていることに興味を持ち、他者の存在や行動や態度や気持ちに、没入してしまうことで「自分への関心」が消滅する状態といってもいいかもしれません。だからこの「他者」というのは別に人間でなくてもいいのです。例えば、猫好きの人が可愛い子猫を見かけて、その猫がよちよち自分のほうに歩いてきた。「かわいい」と思いながらその子猫を抱きかかえたその人は、(その瞬間)自分に関心をもっているでしょうか?持ってないですよね。自分への関心は、子猫という「他者」に移ってしまっている。つまり、その時その人は自分から解放されているんです。

「うつ病」をわずらう人は、四六時中自分のことばかり考えていて、いわば「自分」のとりこになっていると言えます。よってうつ病を治すためには、自分に向けている関心を「他者」へと向けること。そうすれば人は「健康」になれるわけです。うつ症状を訴える人に対して、アドラーは次のように言っています。
「他人を喜ばせることを毎日考えてみることだ。そうすれば二週間で全快する」と。
つまり他者に関心をもつことで発達する「共同体感覚」は、健康のバロメーターであるともいえるのです。
鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)



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