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「性格」とは、決定的なものではなくてクリエイティブなものである-使用の心理学とは-

重要なことは何を遺伝したかではなくて、遺伝したものをどう使うか」であると、アドラーは言っています。


この考え方は「性格」や「人格」というものが遺伝や環境などによって決定されると考える「所有の心理学」に対して、「使用の心理学」と呼ばれています。つまり、「性格」や「人格」は与えられたものをどう使うかを「自分で選び取ることができる」という考え方であり、アドラー心理学ではこれを「自己決定性」と呼んでいます。


アドラー心理学では「性格」や「人格」のことをライフスタイルと呼びますが、アドラーとその仲間たちが最初からこの言葉を使っていたわけではなく、以下のような変遷を経て最終的にこの単語the style of lifeにたどりついたいいます。(『アドラーの生涯』(金子書房)より)




イメージ』→『ガイディングライン』→『ライフプラン』→『ライフスタイル


興味深いのは、アドラーが最初は性格のことを「イメージ」とか「ガイディングライン」と呼んでいたことです。つまり性格とは、「導かれるイメージ」であると考えていたのです。


イメージによって導かれたものが人生における計画(ライフプラン)を作り出し、その計画に「動き」を与えたものが、やがて人生のパターン(行動パターン)として定着していく。これを「ライフスタイル=性格」と呼んだわけです。


では、このイメージとは何なのか?


結論からいってしまうと、「自分自身」と「自分を取り巻く世界」についての考えです。つまり「自分とはどのような存在」であり、そして「(自分は)世界をどのように認識しているか」という考え方の総体です。


アドラーは、「人間はみな、意味の領域に生きている」と言いました。「自分自身」と「自分を取り巻く世界」についての考えとは、いわば「自分と世界に対する意味づけ」なのです。


アドラー心理学では、「自分自身」に対する意味づけを「自己概念」と呼び、「世界」に対する意味づけを「世界像」と呼んでいます。


この2つの意味づけ「自己概念」と「世界像」は、(アドラーの言葉に従うならば)早い子は2歳で、遅くとも5歳くらいまでには形成されるといいます。しかしここで問題になるのは、十分な言葉や思考が発達する前に、この「解釈(意味づけ)」が作られてしまうということです。


この未熟な解釈によって作られた「自己概念」と「世界像」が、その子どもの「劣等感の程度とタイプ」を決定するとアドラー心理学では考えます。そして、この劣等感を補償するためのもう一つのイメージを作り出します。これが「自己理想」と呼ばれるものです。



つまり、子どもは自らの劣等感を埋め合わせるために、「自分は〇〇でなければならない」「自分は〇〇であるべきだ」という仮想の目標(自己理想)を作り上げるのです。そしてこの自己理想にガイド(導かれる)ように生きていくという考え方が、ライフスタイルのもとになっている「イメージ」とか「ガイディングライン」という概念なのです。




「自己理想」は、遺伝や環境によって与えられたものを(これもアドラーの言葉を使うならば)「材料」として、その子の「想像力(creativity)」によって作り上げられるものであると考えます。そういう意味では、人はみな芸術家であるとアドラーは言います。


つまり「性格」や「人格」と呼ばれるものは、持って生まれたものによって決定されるわけでなく、持って生まれたものを材料として使いながら自ら作り上げていく、極めて「クリエイティブ」なものなのです。

鈴木昇平(アドラー・カウンセラー)

 
 
 

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